刺繍糸の本数で仕上がりが変わる!印象を調整する糸の選び方

刺繍糸

同じ図案でも、刺繍糸の本数を変えるだけで、ぐっと雰囲気が変わることをご存じですか?線の太さや色の濃さが少し違うだけで、やわらかさや存在感が変わって見えるんです。作品に合わせて糸の本数を選ぶと、より自分の表現に近づける気がします。

ここでは、刺繍糸の本数がどんな印象の違いを生むのか、そして図案や布に合わせた調整のポイントについて、わたしの経験も交えてお話しします。

本数で変わる雰囲気の違いを楽しむ

まず基本のお話から。クロスステッチでよく使われる25番刺繍糸は、6本が1束になっていて、そこから必要な本数を抜き取って使います。最もスタンダードなのは「2本取り」ですが、1本、3本、それ以上を使う方もいらっしゃいます。

たとえば1本だけだと、線がとても繊細に見えて、控えめで上品な雰囲気。逆に3本で刺すと、しっかりとした太さが出て、色も濃く映えるため、印象がはっきりします。輪郭を強調したいときや、背景に負けないようにしたいときにぴったりです。

2本はその中間で、ちょうどよい存在感と柔らかさがあります。わたしも最初はずっと2本で刺していましたが、作品によって本数を使い分けるようになってから、表現の幅が広がった気がします。

図案の細かさやモチーフの種類で選ぶ

本数を選ぶときには、図案のサイズや布の目の細かさも意識しています。たとえば小さな図案やアルファベットなどの細かい部分は、1本で刺したほうが形がはっきり出ることも。反対に、大きな面積を塗りつぶすような図案では、2本や3本のほうが効率よく、色ムラも出にくいです。

また、図案の中でもモチーフごとに本数を変えることもあります。お花の茎は1本、花びらは2本、中央だけ3本、というふうに使い分けると、作品に立体感やリズムが生まれます。

最初からすべて計画する必要はありません。まずは基本の2本で刺してみて、途中で「もう少し濃くしたいな」と感じたところだけ本数を増やしてみる。そのくらいの気軽さでも、印象はぐっと変わります。

布との相性を考えて調整する

刺繍糸の本数と合わせて考えたいのが、布との相性です。たとえばリネンやアイーダなど、布目が細かい生地を使う場合、太めの糸を使うと目が詰まりすぎてしまうことがあります。そうなると、針が通りにくくなったり、布が引きつれて波打ってしまったりするんです。

反対に、布目が粗めの場合に1本取りを使うと、今度は隙間が目立ってしまって、少し頼りない印象になることも。そんなときは、2本か3本でしっかり刺す方が仕上がりが落ち着きます。

布と糸、それぞれの厚みや風合いに注目して選ぶと、自然な組み合わせが見えてきます。「この布なら、2本がちょうどよさそう」「このモチーフは3本で輪郭を出したいな」そんなふうに考える時間も、作品づくりの楽しみのひとつだと感じています。